辞めたいと思ったことは、何度もあります。ただ、私はまだ辞めていません。現役のまま、この記事を書いています。
私は「辞めた人」ではないので、「辞めてよかったですよ」とは言えません。この記事は、同じように辞めたいと思いながらまだ辞めていない人間が、次の選択肢を調べて整理したものです。今まさに迷っている人と、同じ場所に立って書きます。
私は現役の自販機ルートマンで、ペンネームは無糖といいます。仕事内容そのものは自販機ルートマンの仕事内容と1日の流れにまとめてあります。
世間が言う「辞めたい理由」5つを、現役が答え合わせしてみる
ネット上の体験談を読むと、この仕事を辞めたくなる理由はだいたい5つに集約されています。体への負担、拘束時間が読めないこと、天候、単調でスキルが積み上がらない不安、給料が労働量に見合わない感覚。
現役の私から見て正直に答えると、特に当たっているのは体への負担・天候・給料の3つです。拘束時間も単調さも否定はしません。ただ実感として重いのはこの3つ、という話。
体への負担は説明するまでもないと思います。飲み物は重い。それを毎日、何十ケースも動かします。給料についても、体験談で言われていることと私の実感は近いです。ただこれは長くなるので、別の記事にまとめるつもりです。残るのは天候。ここだけ、世間の書き方に一つ付け足したいことがあります。
天候で意外と語られないのが「風」
体験談の多くは、夏の炎天下と冬の寒さ、それに雨や雪を挙げています。どれもその通りです。特に夏は、暑いうえに飲み物が売れるので補充量まで増える。二重にきついのは事実です。雨の日も、荷物も自分も濡れるうえに台車を押す手も足元も滑る。作業が遅くなるのに、回る台数は変わりません。
ただ、ほとんど語られていないのに現場でこたえるのが風だと私は思っています。
風の強い日は、見本(サンプル)が飛んでいってしまうんです。扉を開けて作業している間に、並べてある見本が煽られる。追いかけて拾って、並べ直す。これが1台や2台では済まない日があります。
しかも厄介なのは時期です。ホットからコールドに切り替えて見本を入れ替える春は、風の強い日が増える時期と重なります。春一番の頃です。ただでさえ入れ替えで時間を取られるところに、風で余計な手間が乗る。私にとって、春は暑さや寒さとは別の意味できつい季節です。
私が本気で「辞めたい」と思った瞬間
給料と天候は、じわじわ効いてくるタイプの理由です。それとは別に、はっきり「もう無理かもしれない」と思う瞬間があります。1日の基本作業だけでもいっぱいいっぱいなのに、そこへ仕事を追加させられるときです。
これが一番こたえます。朝、その日に回る分の段取りを組んで出る。その時点で余裕はほとんどありません。そこへ売り切れの連絡が入って予定外の1台に寄ることになる。ゴミの回収だけのために、もう一度あの場所まで戻ることになる。押したボタンと違う商品が出てくるという連絡が入る。自販機が故障したという連絡が入る。1件ずつなら10分、15分の話かもしれません。
きついのは、時間そのものより「今日はこれで終わり」という見通しが崩れることだと思っています。組み立て直した段取りがまた崩れる。その繰り返しで、体より先に気持ちが削られる。私が辞めたいと思うのは、たいていこのタイミングです。同じ理由で消耗している人がいるなら、それは根性の問題ではないはずです。
勢いで辞める前に|不満を2種類に分けて整理する
選択肢を並べる前に、一度やっておいたほうがいいと考えていることがあります。自分の不満を、「会社を変えれば消えるかもしれないもの」と「この業界にいる限り消えないもの」に仕分けることです。
担当台数の多さ、人員の体制、残業の量、評価のされ方。このあたりは会社によって差が大きい。ここが不満の中心なら、職種を変えなくても解決する可能性が残っています。一方、屋外作業であることと重いものを扱うことは、会社を変えてもついてくる。天候と体が理由なら、業界そのものを動かす話になります。
辞めた後に「そもそも何が嫌だったんだっけ」と分からなくなるのが一番もったいない。仕分けておくと、次に見る求人の条件が自然に絞れます。
体が限界に近いなら、まず負担を減らす手もある
不満の中心が「体」の場合、転職の話に飛ぶ前にできることもあります。私の場合の話として書きます。使っているのは、コルセットと、腰に当てるタイプのシートクッションです。クッションは座面に敷くものではなく、運転席で背もたれと腰の間に当てるほう。長時間の運転が続く日は、あるかないかで帰る頃の感覚が違う気がしています。
コルセットについては、私はした方がいいと思っています。ぎっくり腰をやったときはもちろん、普段も。ただ正直に書くと、私自身は症状が落ち着いているときは着けていません。着けるのは階段で荷物を手上げするとき。負荷が集中すると分かっている場面だけ使う、という付き合い方です。
これはあくまで私の使い方で、常に着けるべきかどうかは私には判断できません。すでに痛みが出ているなら、まず医療機関で診てもらうのが先だと思います。
ぎっくり腰をやったときのことや、実際に使っている物については自販機補充は腰にくるのかにまとめています。体が理由で辞めるかどうかを考えているなら、先にそちらを読んでもらったほうが早いかもしれません。
次の選択肢①|辞めずに、社内で動く道もある
意外と見落とされているのがこれです。「会社を辞める」と「この業界を出る」は、同じ意味ではありません。私の周りには、社内公募があったタイミングで、新しい自販機の設置先を開拓する営業(いわゆる新規開拓)へ移った人がいます。自販機を回る側から、新しく置いてもらう場所を探す側へ移ったということです。
この道の良さは、辞めることで失うものを失わずに済む点。社内で通じる知識も、得意先との関係も残ります。転職には「未経験からやり直す」部分がついてきますが、社内で移るならそこがない。
ただ、正直に書いておきます。私が見たのは社内公募が出たときの話で、いつでも希望すれば移れるのかは分かりません。そういう仕組みがあるかどうかは会社によって違うはずです。それでも、「辞める」以外のカードが存在しうると知っておくだけで、選択肢の見え方は変わると思います。まずは自分の会社にそういう制度があるか、確認してみる価値はあります。
次の選択肢②|運転を続ける道(他業種のルート配送)
外に出る場合、いちばん経験が素直に活きるのはここだと思います。食品、日用品、事務用品。中身が変わっても、車で回って届けるという骨格は同じ。運転にも巡回にも慣れているぶん、入ってから戸惑うことは少ないはずです。「ルート配送」の平均年収は413万円と紹介されています(求人ボックス 給料ナビ/2025年時点の掲載求人から算出)。掲載求人からの算出なので、そのまま自分の年収になる数字ではありません。
ただ、1つ気をつけたいのが車のサイズです。同じ「ルート配送」でも、扱う荷物によって乗る車は変わります。今より大きい車になれば、必要な免許も変わってくる。「運転は慣れているから大丈夫」と思って応募したら、そもそも免許の条件で引っかかった、ということが起こりえます。求人票では、乗る車両のサイズと、応募条件になっている免許を必ず見ておいたほうがいいです。
ドライバーの方向へ寄せる人もいます。私の周りでも、タクシードライバーになったという話を聞いたことがある。ただ人づてに聞いた範囲なので、そういう道もあるらしい、という程度に受け取ってください。
次の選択肢③|雨・風・雪から離れる道(倉庫内作業・物流センター)
辞めたい理由の上位が天候なら、屋根の下に入るという選択肢があります。倉庫内作業や物流センターは荷物を扱う点で今と地続きなので、まったく未知の世界に飛び込む感じにもなりにくい。「倉庫内作業」の平均年収は440万円という目安が出ています(求人ボックス 給料ナビ/2025年時点の掲載求人から算出)。
ただし、ここは正直に書いておきます。屋内に入れば涼しい、とは限りません。空調の入っていない倉庫は夏場かなり暑くなると聞きます。天井が高く広い建物ほど冷えにくい。逆に冷蔵や冷凍を扱う倉庫なら、今度は寒さと付き合うことになります。
つまり、この選択肢で確実に消えるのは雨と風と雪であって、暑さや寒さが消えるとは限らない、というのが正確なところです。だから求人票では、空調の有無や扱う荷物の温度帯を見ておいたほうがいいと思います。「屋内だから楽だろう」で移ると、入ってから話が違うとなりかねません。重いものを扱う現場であることも、たいてい変わりません。
次の選択肢④|営業に寄せる道(ルート営業)
決まった取引先を回るという形は、今の仕事に近いところがあります。飛び込みでゼロから契約を取ってくる新規開拓とは別ものです。「ルート営業」の平均年収の目安は427万円(求人ボックス 給料ナビ/2025年時点の掲載求人から算出)。
向いているのは、人と話すのが苦にならない人、むしろ好きな人だと思います。ルートマンの仕事も得意先とのやり取りはありますが、1日の大半は1人で動いています。営業に寄せるということは、人と関わる時間がぐっと増えるということ。今の「1人で気楽なのがいい」と感じている人には、たぶん向きません。逆に「1人で黙々は寂しい」と思っている人なら、この方向は合うかもしれません。
外に出る3つの選択肢を並べると、413万円・427万円・440万円。差はありますが、劇的に違うわけでもない。年収だけで選ぶより、自分が消したい不満から逆算するほうが納得しやすいと思っています。
この仕事の経験は、何のスキルとして書けるのか
職務経歴書に「自動販売機の補充をしていました」と書いても、たぶん何も伝わりません。相手に通じる言葉への翻訳が要ります。私が考えている翻訳は3つです。
1つ目は段取り力。どの順番で回れば無駄が出ないかを毎日自分で組み立てています。手順を渡されてこなす仕事ではありません。「限られた時間で作業計画を立てて実行してきた」と言い換えられるはずです。
2つ目は地理。担当してきた地域の道と建物は細かく頭に入っています。抜け道も、荷物を運びやすい入口も、混む時間帯も。配送系に移るなら、そのまま戦力になる情報です。
3つ目は得意先とのやり取り。ここは慎重に書きます。売り込んで契約を取る仕事ではないので、一般的な営業職の営業とはたぶん違う。それでも、置かせてもらっている場所の人と関係を保ち、要望を聞いて調整してきた経験ではある。「決まった取引先との関係維持」なら、嘘なく書ける範囲だと思っています。
資格については、取っておけばよかったと思っている
まだ辞めていないので確かめた話ではありませんが、資格があればよかったとは思っています。未経験の分野に移ると給料が下がりやすく、そこを埋められる材料が資格だと考えているからです。
今すぐ辞める気がない人ほど、在職中に取れるものを取っておくのは悪くないはずです。辞めると決めてから慌てるより、働きながらのほうが落ち着いて準備できます。
辞めると決めていなくても、情報は先に集めておける
ここまで書いたことは、全部「辞める前にやっておける」ことです。情報集めも同じ。私は現役のまま転職エージェントを使っています。辞めると決めたからではなく、「今より条件のいい仕事があるのか」を知っておきたいから。在職中でも仕事終わりに面談を入れられます。
助かったのは、自分では思いつかない選択肢が出てくることでした。「手取りを増やしたい」「腰への負担を減らしたい」と伝えたら、想定していなかった職種を勧められた。1人で求人サイトを眺めていたら、たぶん見つけられなかったと思います。
エージェントは無料で相談でき、合わなければ使わなくていいものです。登録したら必ず転職しないといけない仕組みでもありません。まずは相場と選択肢を知るためだけに使う。それで十分だと思います。
まとめ|辞めたい気持ちに、次の行き先を用意しておく
辞めたくなる理由のうち、私の実感で特に重いのは体・天候・給料の3つ。天候では、あまり語られない風がこたえます。そして本気で辞めたいと思うのは、基本の作業でいっぱいなところへ仕事が追加されるとき。心当たりがある人は、たぶん私と同じところで消耗しています。
次の選択肢は、外に出るものだけではありません。社内で動く道、運転を続ける道、雨風から離れる道、営業に寄せる道。年収の目安はどれも求人からの算出値です。
私はまだ辞めていないので、「こうすれば上手くいく」とは言えません。言えるのは1つだけ。辞めたい気持ちを抱えたまま何もしない時間が、一番しんどいということです。仕分けでも、資格でも、情報集めでも、どれか1つ動かしておくと気持ちは少し楽になります。
なお「これからこの仕事をやろうか」と迷ってここに来た人は、先に未経験から自販機ルートマンになる方法で向き不向きを確かめてからのほうがいいはずです。
私も、まだ迷っている側の人間です。同じところで悩んでいる人の材料の1つになれば嬉しく思います。


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