【現役が計算】自販機補充はきつい?楽?1日1.7トン運ぶ夏のリアル

自販機中の人 自販機補充はきつい?楽?現役が計算 仕事のリアル

きついかどうかは、季節と場所で変わります。 夏は本当にきつい。冬は、運ぶ重さでいえば夏ほどではありません。ただし寒さと雪という別のきつさがあるので、冬が楽という意味ではないです。同じ台数を回っても、運ぶ重さは2倍以上違います。

私は現役の自販機ルートマンで、ペンネームは無糖といいます。「自販機補充 きつい」で検索すると体験談も解説記事も出てきますが、書かれているのはほとんどが感想でした。実際に1日どれだけの重さを運んでいるのかを数字で出した記事が、見当たらない。

なので自分で計算しました。まず1日の総運搬重量を出し、そのうえで世間の「きつい」5つに答え合わせをして、最後にあまり語られていない本当にきついところを書きます。仕事の中身そのものは自販機ルートマンの仕事内容と1日の流れにまとめてあります。

1本の重さから計算する|ペットボトルは缶の約2.6倍重い

飲み物の重さは、中身だけではありません。入れ物の重さも一緒に運んでいます。 一般的な185g缶の空き缶は、スチール缶で約16.2g、アルミ缶で約9〜10g(日本製鉄・日本コカ・コーラの公表資料より)。500mlのペットボトルは、容器がおおむね25g前後。これを足して計算します。缶はメーカーによって差があるので、ここでは重いほうのスチール缶に近い15gで計算しました。

中身容器1本の重さ
缶(185g)185g約15g約200g
ペットボトル(500ml)約500g約25g約525g

ペットボトル1本は、缶1本の約2.6倍重い。 これがこの記事の出発点です。

次にケース単位にします。缶は1ケース30本入り、ペットボトルは1ケース24本入りです。

入数1ケースの重さ
30本約6.0kg
ペットボトル24本約12.6kg

ペットボトルは1本あたり2.6倍でしたが、缶のほうが1ケースに多く入るぶん、ケース単位だと約2倍に落ち着きます。なおネット上の体験談では「500ml24本入りで約12kg」という数字がよく出てきますが、私の計算とほぼ一致しました。数字の置き方は間違っていないはずです。

1日に運ぶのは夏で約1.7トン|重さでいえば冬の2.4倍

私が1日に回るのは20台前後。1台あたりの補充本数は、夏で平均200本、冬で平均120本です。

季節で変わるのは本数だけではありません。中身の比率も入れ替わります。 夏は冷たいペットボトルが売れるのでペット7に対して缶3くらい。冬は温かい缶コーヒーが増えるので、逆にペット3に対して缶7くらいになります。重いほうが増える夏と軽いほうが増える冬で、差が広がるわけです。

1台あたり20台の合計
夏(1台200本)約86kg約1.7トン
冬(1台120本)約36kg約0.7トン

重さでいえば、夏は冬の約2.4倍。 自分でも、出た数字を二度見しました。ただし冬が楽になるわけではありません。軽くなるかわりに、寒さと雪がのしかかってきます。

トンではぴんと来ないと思うので、置き換えます。米俵1俵が60kg。夏の1.7トンは米俵28俵にあたります。それを毎日トラックから降ろして、自販機まで運んで、1本ずつ入れている。

極端な例も出しておきます。担当ルートには、とにかく売れる自販機が1〜2台あります。そういう自販機では1回で380本以上補充することもあり、この1台だけで約160kg。ただし念のため、380本以上というのは1日の総本数ではありません。 特によく売れる1〜2台での話です。

そして、この計算には回収する空き缶やペットボトルの重さが入っていません。 満タンのゴミ箱を積み込む分は、ここに上乗せされます。

なお、この量に給料が見合っているかどうかは別の話です。そちらは自販機補充の給料・年収のリアルにまとめました。

世間で言われる「きつい」5つを、現役が判定してみた

ネット上で「自販機補充はきつい」と語られるとき、理由はだいたい次の5つに集約されています。現役から見てどうなのか、先に判定だけ並べます。

世間で言われること現役の判定
重い物を運ぶ自販機までの距離しだい
夏と冬の屋外作業そのとおり
時間に追われるそのとおり
一人作業で孤独あまり感じない
覚えることが多い慣れれば落ち着く

意外に思われるかもしれませんが、あれだけ重いものを運んでいる私が、「重い物を運ぶ」に条件をつけています。 順に説明します。

重い物を運ぶ|きついかどうかは自販機までの距離で決まる

補充のとき、ケースをそのまま自販機の前まで運んでいるわけではありません。その自販機に必要な分だけトラックからピッキングして、オリコン(折りたたみ式のコンテナ)に入れて運びます。

だから、トラックを停めた場所から自販機が近ければ、それほどきつくはありません。台車も使えます。1.7トンという数字のわりに距離を条件に挙げるのは、この作業の形があるからです。

問題は台車が使えない場所。段差がある、砂利や芝生の上を通る、屋内の狭い通路を抜ける。そういう場所では結局、手で持って運ぶことになります。中でもこたえるのが階段。この話は後半でもう一度書きます。

夏と冬の屋外作業|夏は暑さと重さが同時に来る、冬は雪で手順が変わる

ここは反論の余地がありません。

夏は暑い。それだけでも十分きついのですが、前半の計算とつながる話があります。夏は冷たいペットボトルがよく売れる。つまり、一番暑い時期に一番重い荷物を運ぶことになる。 1.7トンと0.7トンの差は、そのまま体への負担の差です。

では冬は軽いぶん楽なのかというと、そうではありません。寒さは寒さで、確実にこたえます。 さらに雪が乗ると、もう一段きつくなる。普段なら台車が押せる場所が、雪があると押せなくなる。 そうなると手で運ぶしかありません。天候に左右されるというのは、寒いとか濡れるとかいう話だけではなく、作業のやり方そのものが変わってしまうということです。運ぶ量が減っても、1台にかかる手間はむしろ増える。冬のきつさは、重さの表には出てこないところにあります。

時間に追われる|きついのは作業量より予定が崩れること

ここもそのとおりです。ただ、こたえるのは作業が多いことそのものではありません。

朝の時点で、その日回る分の段取りは組んであります。そこへ予定になかった売り切れの連絡が入る。空き缶入れがいっぱいだからゴミを回収してほしいと連絡が来る。1件ずつなら大した時間ではなくても、組み直した段取りがまた崩れる感覚がじわじわ効いてきます。加えて、ホットとコールドを入れ替える切替作業が入る日は、自販機1台あたりにかかる時間が普段よりはっきり長くなります。

一人作業で孤独/覚えることが多い|どちらも大きな負担にはなっていない

残りの2つは、私の実感としてはそれほどではありません。

一人で動くことを孤独と感じたことは、ほとんどありません。手伝ってもらえたら楽になるのは間違いないですが、それは孤独とは別の話です。覚えることの多さも同じで、最初は商品名も手順も覚えることだらけですが、毎日同じルートを回るので自然と身につきます。

あまり語られていない、本当にきついところ

ここからが、この記事で一番書きたかったところです。検索して出てくる記事ではあまり触れられていないけれど、現場でこたえるのはこちらです。

階段の手上げ

台車が使えない場所の中でも、階段は別格です。エレベーターのない建物に自販機があれば、手で持って上げるしかありません。そして1回では持てません。 必ず何往復もすることになります。

前半の計算と重ねると分かりやすいはずです。同じ86kgでも、平らな場所を台車で運ぶ86kgと、階段を何往復もして手で上げる86kgは、まったく別の重さです。

この階段の手上げが、1日の中で一番腰に来ます。実際にぎっくり腰をやったときの話は自販機補充は腰にくるのかに書きました。

狭い道の運転と、狭い場所の駐車

運転そのものより、道と駐車場所のほうがきついというのが私の実感です。

自販機は、必ずしも大きな道路に面しているわけではありません。住宅街の細い道の先にあることも、車1台がぎりぎり通れる場所にあることもある。そこへ2トン級のトラックで入っていきます。停める場所はだいたい決まっているのですが、そこに別の車が入っていると、代わりを探すことになる。ぶつけたら終わりなので、常に神経を使います。求人票の「運転が好きな方歓迎」からは、たぶんこの部分は想像できません。

夏場のゴミの量

夏は売れる季節なので、そのぶん空き缶とペットボトルも大量に出ます。 補充で持っていく荷物が一番重い季節に、持ち帰るゴミも一番多い。行きも帰りも重いということです。しかも作業しているのは炎天下。重量の計算には出てきませんが、体感として夏がきつい理由の一つは間違いなくこれです。

ただ、量が増えるだけならまだ計算できます。実際にはリサイクルボックスの中身が空き容器だけではないことも多く、そこが一番やっかいなところです。この話は自販機のリサイクルボックスはなぜ溢れるのかに書きました。

ここまでの3つは、どれも求人票には書かれていません。応募する前に自分で見抜くのは、正直むずかしいと思います。

だからこそ、面接で具体的に聞いておくといいはずです。階段のある設置先はどのくらいあるのか、駐車しにくい場所は多いのか。答えをはぐらかされるようなら、それはそれで一つの判断材料になります。

楽なところ|出発してしまえば自由、そして悩まなくていい

きつい話ばかり書いてきましたが、楽なところもあります。正直に2つだけ。

1つは、出発してしまえば一人だということ。日中は基本的に単独行動なので、上司や同僚と常に顔を合わせることがありません。回る順番も自分で決められます。ただし、自由なのは順番であって、量ではありません。 予定の件数をこなすことが前提の自由です。ここを取り違えると、入ってから話が違うと感じることになります。

もう1つは、仕事の内容そのもので悩むことが、ほとんどないことです。決まったことをやれば、だいたい終わる。持ち帰って考える種類の仕事ではありません。前の職場で「家に帰っても仕事のことを考えてしまう」タイプの消耗をしていた人なら、この差は分かってもらえると思います。

それでも私が続けているのは、きつさの種類が合っているから

辞めたいと思ったことは何度もあります(そのときのことは辞めたい人の次の選択肢に書きました)。それでも続けているのは、きつさの中身が自分に合っているからです。

この仕事のきつさは、体と天候と時間。人に気を遣うきつさでも、答えのない問題を考え続けるきつさでもありません。どちらがこたえるかは人によって違います。私は前者のほうがまだ耐えられる、というだけの話です。だから「きついからやめておけ」とは書きません。どのきつさなら自分は引き受けられるのかで判断してもらうのが、一番正確だと思っています。

まとめ|夏の1.7トンを見て、それでもやれそうかで決める

1日に運ぶ重さは、20台回って夏で約1.7トン、冬で約0.7トン。米俵にすると夏は1日28俵です。ペットボトル1本は缶の約2.6倍重く、夏はそのペットボトルが増えるので、暑い時期ほど荷物も重くなります。冬は軽くなるかわりに、寒さと雪がついてきます。

世間で言われる5つのうち当たっているのは、夏冬の屋外作業と、時間に追われること。重さは自販機までの距離しだいで、孤独さと覚えることの多さは大きな負担になっていません。そして、あまり語られていない本当にきついのは、階段の手上げ、狭い道の運転と駐車、夏場のゴミの量のほうです。

楽なのは、出発すれば一人で動けることと、仕事の中身で悩まなくていいこと。この2つに価値を感じられる人なら、きつい仕事ではあっても、悪くない仕事だと思います。

逆に、ここまで読んで「この重さは自分には無理だ」「1年中を屋外で、というのがきつい」と感じたなら、その感覚は無視しないほうがいいです。慣れでどうにかなる部分と、そうでない部分があります。今すぐ動く気がなくても、他にどんな働き方があるのかを見ておくだけで判断の材料は増えます。私も在職中のまま外を見ている側の人間です。

きつさを盛るのも、隠すのも、これから入る人には不親切だと思っています。数字にして出したこの記事が、判断の材料になれば嬉しく思います。


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