設置先の方から、こう言われることがあります。
「同じ商品が2つ並んでるけど、1つを別のに変えてよ」
無糖のコーヒーが2つ並んでいるから、片方を微糖に変えてほしい。コーヒーをジュースにして、と言われることもあります。
これ、できるときとできないときがあります。
買う側からしても、たぶん不思議な光景だと思います。他にも並べる場所はあるのに、わざわざ同じものを2つ置いている。片方を別の商品にすればいいのに、と。
同じ商品が2つ並ぶ理由は、大きく2つあります。意味はまるで違うのに、外から見るとどちらも同じに見えます。
見本は36個。でも中身が36種類とはかぎりません
表に並んでいる見本は3段で、1段に12個。合計36個です。ボタンもその数だけあります。よく見かける30セレと36セレは、どちらもこの並びです。
変わるのは中のほうです。自販機の中には、商品を縦に積んでおく場所が並んでいます。このひとつひとつをコラムと呼びます。コラムには番号がふってあって、36セレなら6列×6段で、1番から36番まであります。
表の見本は3段に12個ずつ、中のコラムは6列×6段。同じ36でも並び方が違います。表の左から1番目の見本の裏に、1番のコラムがあるわけではありません。
36セレは36種類入るということです。36あるコラムに36種類入れれば、見本も36種類きれいに並びます。
ただし、それは36すべてを使った場合の話です。あとで書きますが、わざとコラムを空けておくことがあって、そのときは36セレでもダブりが出ます。
問題は30セレのほうです。
こちらは入るのが30種類。コラムは30番までしかないのに、ボタンは36個あります。メーカーの仕様です。富士電機の製品ページにも「30セレクション 36押ボタン」という表記があります(2026年9月時点)。
中の並びは機種によって違って、6列×5段のものもあれば、5列×6段のものもあります。ただ、どちらにしてもコラムは30までです。
30しかない中身に対して、押せるボタンが36個。この時点で、6個のボタンが余ります。
並べ方を工夫してどうにかなる話ではありません。
ただ、2つ並びとはかぎりません。3枚並べることも4枚並べることもあります。決まっているのは余りが6個ということだけで、その6個をどう使うかは自由です。
2枚ずつなら6商品に散らせます。4枚並べは1商品で3個使うので、2商品で終わり。ダブって見えるのが2商品しかない自販機も、理屈のうえではありえます。
ただ、見た目でいえば2枚ずつ6商品に散らしたほうがいいと思います。同じ見本が4枚も並んでいると、そのぶん選べる種類が少なく見える。冒頭の「1つを別のに変えてよ」も、そういうときほど言われます。
2つのボタンが、1つのコラムに繋がっています
余った6個のボタンはどうしているのか。
すでに使っているコラムに、もう一度つないでいます。1つのコラムに、2つのボタンが繋がっている状態です。

だから右の無糖コーヒーを押しても、左の無糖コーヒーを押しても、同じコラムから出てきます。どちらを押しても構いません。中の人から見れば、そもそも同じ場所です。
見本を置かずに空欄にしておくこともできます。そのボタンは、常に売切ランプが点いた状態になります。
ただ、そうすると表に抜けができます。見栄えがよくない。それなら同じ見本をもう1枚並べたほうがまし、ということです。
売り切れたときも、2つは同じ動きをします。
中身は1コラムしかないので、売り切れれば2つとも同時に売切のランプが点きます。片方だけ残ることはありません。当たり前といえば当たり前で、そのコラムが空になったのだから、繋がっているボタンは両方とも売切になります。
でも、本当に2つ入っていることもあります
コラムが足りているのに、わざと同じ商品を2つのコラムに入れることがあります。よく売れる商品を切らしたくないときです。1コラムだと、補充から次の補充までのあいだに売切れてしまう。だから2コラム使います。
このときは、交互に出す設定をしておきます。1番のコラムから1本、次は2番のコラムから1本、また1番から、というふうに順番に出てくる。両方を均等に減らしていくためです。
こうしておくと、片方のコラムが売り切れても売切ランプは点きません。もう片方から出せるからです。
私も、この交互に出す設定をし忘れたことがあります。
右の無糖コーヒーが売切ランプ。左の無糖コーヒーはまだ買える。同じ商品が2つ並んでいるのに、片方だけ売り切れていました。
気づくのは次の補充のときです。
違いは中に入っている本数です。1コラムぶんしかないのと、2コラムぶん入っているのとでは、売り切れるまでの時間が変わります。
外から見ているぶんには、まったく同じ景色です。
「1つを別の商品に変えて」と言われて、できる場合とできない場合
冒頭の話に戻ります。
片方を微糖に変えられるかどうかは、その自販機に中身を入れていないコラムがあるかどうかで決まります。
コラムを空けたままにしておくことがあります。
理由はいくつかあって、ひとつは新商品です。近いうちにセットする予定があるなら、その場所を先に空けておきます。あとから場所を作るより、最初から取っておいたほうが早い。
売れないから商品を絞る、というのもあります。動かない商品を並べておく意味はないので、抜いてそのまま空けておく。
あとは単純に、入れる商品が増えるほど手間も増えるからです。
空けてあるコラムには、入れる商品がないので見本も出しません。すると、そのコラムに繋がるはずだったボタンが余ります。余ったぶんはどこかのコラムに振り分けることになるので、30セレのダブりとは別に、見本のダブりがさらに増えていきます。36セレでもダブりが出るのは、これが理由です。
話を戻すと、空いているコラムがあるなら簡単です。そこに微糖を入れて、片方の見本を微糖に差し替えれば終わりです。無糖と微糖が1つずつ並びます。
全部のコラムが埋まっていると、これができません。
2つの見本が同じ1つのコラムを指しているので、片方だけを変えるということが成立しないんです。中身を微糖に入れ替えて見本を1つ差し替えると、無糖コーヒーが消えて、微糖コーヒーが2つ並びます。お客さんの選べる種類は増えていない。
言われたときに空きがなければ、その場ではできませんと答えることになります。
ちなみに、どのボタンをどのコラムにつなぐかという設定の話は自販機のホットはいつから?でも少し書きました。ホットへの切替えのときにも、同じ作業をやっています。
外から見分ける方法はありません
ここまで書いておいて何ですが、あなたの目の前の自販機がどちらなのかは、外からは分かりません。
売り切れるまで待てば分かりそうなものですが、片方だけ売切になるのは、2コラム入れていて交互に出す設定をしていないときだけです。きちんと交互に出していれば、最後は両方まとめて売切になります。ボタンが余っているほうと、同じ見え方です。
そもそも、売り切れるまで張り込む人もいないと思いますが。
同じ商品が2つ並んでいるのを見て、品揃えの手抜きだと思っていた方がいたら、そこだけは違います。
扉を開ければ、すぐ分かるんですけどね。

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