自販機の横に置いてあるリサイクルボックス。空き缶やペットボトルが溢れて、周りに置かれているのを見たことがある人は多いと思います。
そういう光景を見ると、こう思うのではないでしょうか。
「回収が来ていないんだな」
私は自販機の補充と回収を担当しています。その立場から言うと、それだけでは説明がつきません。
この記事では、なぜリサイクルボックスが溢れるのかを、現場で見ていることと、業界団体や行政が公開している情報の両方から整理します。利用者を責める話にも、回収する側をかばう話にもしないつもりです。原因は1つではないからです。
そもそも、売れた本数と入っている量は一致しません
まず、ここから話を始めさせてください。
「その自販機で100本売れたなら、横のリサイクルボックスには100本分くらい入っているはず」
そう考えるのが自然だと思います。でも、実際にはそうなりません。
理由はいくつも考えられます。買った人がその場で飲むとは限りません。持ち帰って、家や職場で飲むこともあります。買った場所と、飲み終わる場所は違います。
逆もあります。別の場所で買った容器が入ることもあります。通りがかりに、手に持っていた空き容器を入れる。ごく普通の行動です。
そして、飲料の容器ですらないものが入ることもあります。これは後で詳しく書きます。
つまり、リサイクルボックスの中身は、その自販機の売上とは別の理屈で増えたり減ったりしています。「売れたぶんだけ入る」という前提が、そもそも成り立っていません。
なお、自販機補充はきつい?楽?にも書いたとおり、夏はゴミの量そのものが増えます。ただしそれは季節による総量の話で、本数どおりに入っているかどうかとは別の話です。
通常は、補充や売上回収と同じサイクルで回収できています
もう一つ、現場の感覚をお伝えします。
リサイクルボックスの回収は、商品の補充や売上金の回収と一緒に行っています。自販機の前でやることの1つです。特別に「ゴミだけを回収しに行く日」を作らなくても、通常の業務のサイクルの中で対応できています。
仕事の流れそのものは自販機ルートマンの仕事内容と1日の流れに書きました。
つまり、「売れているからリサイクルボックスがすぐ満杯になる」という単純な関係ではありません。通常の販売量であれば、通常のサイクルで足りています。
ただし、これは私が担当している範囲での話です。設置している場所、通る人の数、周りにゴミ箱があるかどうか。条件が違えば、状況も変わります。どこでも同じサイクルで足りる、という話ではありません。
そのうえで、こう考えてみてください。
通常のサイクルで足りているはずなのに、溢れている。それなら、何が増えているのでしょうか。
理由①:飲料の容器ではないものが入っています
ここからが本題です。
私が実際に見たことがあるものを挙げます。
- 2Lのペットボトル
- 一升瓶
- 調味料の容器
- 弁当の容器
- 惣菜の容器
- 空き缶を袋にまとめたもの
- 傘
傘は飲み物ではありません。
そして、この中にはっきりした手がかりがあります。
自販機で売っているのは、だいたい500mlか525mlです。600mlの商品もあります。ただ、2Lは売っていません。一升瓶も、調味料も、当然売っていません。
つまりこれらは、その自販機で買われたものではないということです。どこか別の場所から持ってこられて、そこに入れられています。物を見れば分かります。
弁当や惣菜の容器は、外で買って外で食べたのかもしれませんし、家から持ってこられたのかもしれません。そこは容器を見ても分かりません。ただ、少なくとも自販機で買ったものではないことは確かです。
これは私の周りだけの話ではありません。全国清涼飲料連合会は、リサイクルボックスの中身の約3割を、飲料の空容器以外の異物(一般ごみ)が占めているとしています。飲み残しも約11%にのぼるとのことです。
つまり、本来そこに入るはずのないものが、それなりの割合で入っているということです。私が見ているものは、特別に運が悪いわけではないようです。
飲み残しは、重さとして効いてきます。中身が入っているぶん、そのまま重くなります。この話は自販機補充は腰にくるのかにも書きました。
危ないものが入っていることもあります
異物の中でも、これだけは扱いが違うというものがあります。
カセットガスボンベです。
私は実際に見たことがあります。
中身が残ったカセットボンベやスプレー缶については、各自治体が繰り返し注意喚起をしています。ごみ収集車で圧縮したときにガスに引火して火災になるケースがあるためです(広島市、東京消防庁)。
リサイクルボックスの回収でも同じことが起きるかどうかまでは、私には分かりません。ただ、あの中に入っているのを見たときは、単純に怖いと思いました。
他の異物は「困る」で済みます。これは「危ない」の話です。
理由②:ゴミ箱だと思われています
なぜ、飲料以外のものが入るのでしょうか。
一番大きいのは、あれがゴミ箱だと思われていることだと思います。
そう思われるのも、無理はない気もします。自販機の横に、口の開いた箱が置いてある。飲み物を買って、飲み終わって、その箱に入れる。ここまでは自然な流れです。そこから「じゃあ、この弁当の容器も」となるまでの距離は、そんなに遠くありません。
ここは分けて考える必要があると思っています。
知らない人。リサイクルボックスが飲料容器を集めるためのものだと知らない。見た目から判断している。説明されれば、たぶん理解してもらえる人たちです。
明らかに持ち込んでいる人。一升瓶や調味料の容器を、わざわざそこまで持ってきて入れる。これは知らなかったでは説明がつきません。
目の前で入れられたことがあります
一度、こういうことがありました。
作業をしている最中に、袋に入った空き缶を持ってきて、次々とリサイクルボックスに入れていった人がいました。
私はその場にいました。作業着を着て、自販機を開けて、まさに回収をしている最中です。回収している人間が目の前にいるのに、その横で入れていく。
正直に言うと、「よく捨てられるな」と思いました。
何も言いませんでした。言えばトラブルになる可能性もあります。仕事中ですし、そこで揉めても仕方がありません。だから黙って作業を続けました。
いま思い返しても、あの場面で声をかけるのが正解だったとは思えません。ただ、あの人はたぶん、あれが悪いことだと思っていなかったのだろうなとは思います。
満杯じゃないのに、入らないことがあります
もう1つ、外からは分からない現象があります。
中にはまだ空きがあるのに、入らなくなっていることがあります。
原因の1つが、テイクアウトの飲料カップです。
カップ本体より、蓋の部分のほうが大きいものがあります。そのままでは投入口を通りません。それを無理に押し込むと、蓋が引っかかって、投入口を塞いでしまいます。
こうなると、どうなるか。
後から来た人が、ペットボトルや缶を入れられません。入らないので、「もう満杯なんだな」と判断します。そして、箱の上や横に置いていきます。
周りに空き容器が並びます。外から見れば、完全に溢れている状態です。
でも、箱の中にはまだスペースがあります。
私の仕事では、こういうケースを時々見かけます。
そして興味深いことに、業界側も同じ問題を認識しています。
環境省は令和4年の10月から12月にかけて、東京都調布市と神奈川県川崎市で実証事業を行っています。そこで先行設置されたのが、投入口を下向きにするなどの新機能を備えたリサイクルボックスでした(環境省)。本来入れるべきでないものを入れにくくするための構造です。
そして全国清涼飲料連合会は、この新しい仕様のボックスについて、いずれの地域でも約3割から5割の削減効果を確認したとしています(全国清涼飲料連合会)。
投入口の形を変えるだけで数字が動くということは、それだけ「入れにくくすれば入らない」種類の問題でもあったということだと思います。
「回収が遅いだけでは」への答え
ここまで読んでいただいた方には、もう伝わっているかもしれません。
溢れている=回収が来ていない、とは限りません。
- 売れた本数と、入っている量は一致しない
- 飲料容器以外のものが3割入っている
- 投入口が塞がっているだけで、中は空いていることがある
このどれもが、回収の頻度とは別の理由で起きています。
とはいえ、回収する側に何の責任もない、と言うつもりもありません。
自販機の業界には自販機自主ガイドラインというものがあり、使用済み容器の回収やリサイクルボックスの設置、廃棄物の適正な処理についての定めが置かれています。これは法律ではなく、業界が自分たちで決めた自主的なルールです。ただ、設置して管理する側にもやるべきことがある、という考え方自体は業界の中にあります。
実際、回収の頻度は場所によって変わります。人通りの多い場所と少ない場所では、同じサイクルで足りるはずがありません。「うちは通常サイクルで足りている」というのは、あくまで私が担当している範囲の話です。
結局のところ、溢れている理由は1つに絞れません。
利用者の入れ方、ボックスの構造、設置されている場所、回収のサイクル。このどれか1つのせいにすると、たぶん間違います。
回収する側から見て、こうしてもらえると助かります
ここまで問題の話ばかりでした。では、どうすればいいのか。
まず、リサイクルボックスに入れるのは、飲料の空き容器だけです。これが本来の使い方です。
そのうえで、回収している側から見て、特にありがたいのは次の2つです。
中身は空けてから入れてください。飲み残しはそのまま重さになります。回収する側の負担が変わります。
袋にまとめたまま入れないでください。まとめて入れられると、中身が何なのか分かりません。
では、飲み終わった容器以外はどこへ持っていけばいいのか。
自治体の資源回収が基本になります。加えて、スーパーなどで店頭回収をしている店舗もあります。ペットボトルや空き缶、食品トレーなどを回収してくれる場所が、地域によって用意されています。
ただし、回収している品目も条件も、店舗によってかなり違います。中をすすいでから出すよう求められることが多く、キャップやラベルの扱いも店によって変わります(江東区、山形県)。利用するときは、その店の表示を確認してください。
私は自治体のルールに詳しいわけではありません。住んでいる場所によってルールが違うので、そこは各自治体の案内を見てもらうのが確実です。
まとめ
自販機の横のリサイクルボックスが溢れているのを見たら、「回収が遅いんだな」と思う前に、少しだけ別の可能性も思い出してもらえたら嬉しいです。
- 売れた本数と、入っている量は一致しません
- 中身の約3割を、飲料の空容器以外のものが占めているとされています
- 投入口が塞がっているだけで、中には空きがあることがあります
- 原因は1つではありません
私は補充と回収を担当しているので、リサイクルボックスの中身を日々見ています。傘が入っていたときは、さすがに笑いました。カセットボンベのときは、笑えませんでした。
飲み終わった容器を、その場のリサイクルボックスに入れる。それ自体は、まったく問題のない行動です。ただ、あの箱が何のためにあるのかを知っている人が少し増えるだけで、あの光景はたぶん減ります。
自販機の横で、そのリサイクルボックスを開けて中身を回収しているのが私たちです。普段どんな仕事をしているのかは自販機ルートマンの仕事内容と1日の流れに書いているので、よければ読んでみてください。


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